「温活」「冷えとり」というと、漢方のイメージが強く、中医学に興味を持っている方も多いかと思います。今回は、口コミからの来院が絶えず、患者さんからの信頼も厚い〈吉祥寺中医クリニック〉の長瀬眞彦先生に、中医学から見た「冷え」と「冷えとり」についてお話を伺いました。
前編では、長瀬先生の中医学との出合いから冷えによる不調、その判断までをお伝えしましたが、後編では、冷えの構造と、その対処方法についてお伝えします。
冷えが身体に及ぼす影響って?
冷えは、「冷えている」という感覚のほか、実際に身体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
東洋医学的には、まず冷えると「気」の流れが滞る=「気滞」ということが起こります。「気」というのは血液をぐるぐる循環させるエネルギーですので、血の流れが滞るということになるんですね。そうすると、血が流れる部分に痛みを感じたり、塊、つまり、わかりやすく極端な話をしますと、腫瘍ができやすくなったりします。
いろんな機能も落ちてしまったりするので、例えば肺が冷えてしまうと喘息になりやすくなりますし、鼻が冷えると花粉症やアレルギー性鼻炎に、お腹が冷えると下痢をしたり胃炎になりやすくなります。そして子宮などの婦人科系が冷えると、生理不順や不妊などにつながると考えられます。
子宮が冷える感覚って、手足に比べてわかりにくい気がするのですが…。
腹部が冷えるって言う方はいらっしゃいますよ。
あとは、帯のように腰のまわりが冷たくなる方もいます。
中医学的に見ると、末端の冷えと、お腹(内臓)の冷え、表面の冷え、この3パターンが多いですね
あたためることで身体の状態を良くしていくことが、この温活サイトのテーマですが、あたためることで「気」の流れが良くなると、血の巡りが良くなってくるということですね
そうですね。正常に機能するという意味で、健康体に近づくということになります
不妊と冷えの関係は?
不妊などは深刻な悩みではありますが、それはあくまでひとつの症状であって、冷え=気の流れを滞らせてしまうと、身体のすべてに悪いってことですよね。ということは、不妊で悩んでいる方は、ほかの部分も調子が良くないと考えたほうがよいのでしょうか?
その通りです。それ(不妊)はあくまで結果ということになります。もちろん、不妊だけではなく、ほかの不調もそうです。症状がどこかに出ていても、問題を探っていくと、そこだけではないんですよね
自分が一番自覚しているところがどこか、ということで相談に来ているだけということですね。不妊で悩んでいると、わかりやすく「授かりたいけど授からない」から、はっきりと悩みとして意識するわけで…。
そうです。不妊として相談に来られても、人によって実は弱いところは違うんですよね。中医学の治療では、その弱いところに合わせて薬を出していくということになります
先ほど、冷えには3パターンあると伺いましたが、それぞれのあたため方は、どのように変わってくるのでしょうか? また、自分でできるセルフケアについて教えてください
冷えのパターン別・温活セルフケア【末端の冷え】
まず、末端が冷える人っていうのは、自律神経に何かしらのトラブルがあるんですね。これは西洋医学的な考え方なのですが、末端の冷えというのは、緊張が抜けない、交感神経の過緊張という状態で、これは現代人に非常に多いです。緊張がずっと抜けないことで、末端の血管が収縮してしまい、冷えてしまうんです。
こういう方は肩も凝っていますし、さらにひどくなると、のぼせてしまうという人もいます。「冷えのぼせ」という状態です。自律神経が正常というのは、頭寒足熱、上が涼しくて末端があたたかいという状態なんですよね。それがひっくり返ってしまっているので、そこを良くしていくアプローチになります。
冷えのパターン別・温活セルフケア【お腹(内蔵)の冷え】
冷えのパターン別・温活セルフケア【表面の冷え】
自分でできることでしたら、乾布摩擦ですね。冷暖房による体温調節機能が落ちている人がなりやすいんです。冬なのに毛穴を閉じて体温を保持できなかったり、冷房で風邪を引きやすかったり……外気から影響を受けるものなので、乾布摩擦で皮膚を鍛えるという方法が効果的になってきます。
長瀬先生は、症状が表に出るまで対処をせず「なんとなく不調」なまま過ごしている女性の多さを強く感じているそうです。表に出ている症状だけを取り除くのではなく、その人の体質に合わせて不調を根本的な部分から向き合って、身体の機能を正常にしていくのが中医学の考え方。〈吉祥寺中医クリニック〉では、はっきりとした自覚症状がなくても、「未病」の状態での相談も受け入れてくださるそうです。
また、「ダイエットや健康法など、いまは情報があふれていますが、万人に当てはまるというものはなく、自分を知るということが非常に大切だと思っています」と長瀬先生。自分がどうしたら不調を強く感じるか、逆にどうしたら楽になったり心地良くなるか。まずはそれを感じ取ることが第一歩だとのこと。
忙しい毎日の中では、ちょっとした不調くらいだとついそのままにしてしまいがちですが、あたたかい身体でイキイキと過ごすためにも、自分の身体と向き合うことを大切していきたいですね。
吉祥寺中医クリニック 長瀬眞彦先生
吉祥寺中医クリニック
1994年 順天堂大学医学部卒業 JR東京総合病院にて内科研修
1996年 同大学医学部附属順天堂医院放射線科入局
1999年 タニクリニック 副院長
2001年 鉄砲洲診療所 副所長
2006年 吉祥寺中医クリニック院長就任
■資格・所属学会他日本東洋医学会漢方専門医、日本東方医学会中医専門医、日本内科学会、日本胎盤臨床医学会理事長、日本東方医学会理事